ご案内
米国における多くの競合企業が資産運用にフォーカスしているなか、Hは、タックスプランニングや顧客の保有している全資産(出資している事業の持ち分や美術品などの非流動資産を含む)を対象にした財産管理サービスに力を入れている。
専門家チームで対応。
チームの規模は、Hが顧客に提供するサービスと他社が提供するサービスの役割分担に依存する。
1家族に対して最大で11人で対応しているケースがある、また財産管理サービスの1部分だけを支援する場合は1人のケースもある。
顧客とのコミュニケーションは、「クライアン卜・サービス・ディレクター」と呼ぶ1人の担当者を通じて行う(他社と共同で構成しているチームの場合でも同様)。
顧客とHの間の交渉によって決定する。
顧客へのサービス提供は、さまざまな分野の専門家と顧客の信頼を得たアドバイザーで構成する専門家チームがフレキシブルに対応する。
たとえば、1ファミリーに対して最大で11人のチームで対応しているケースもあるという。
「打てば響く人材」をどれだけ増やせるか?超富裕層向けのPBサービスの最大の差別化要素は、プライベートバンカーの人材にあることは、疑う余地がない。
これは、富裕層向けのサービスにおいても同様である。
では、どのような人材を採用し、育成すればよいのか。
この答えは難しい。
知識やスキルの要件であれば、それを形に落とし込んで、トレーニングすることは可能だ。
しかし、「広い見識を持ち、品格のある、幅広い素養に恵まれた人を採用・教育する」といっても、それは「優秀な人を雇う」ということと大して変わらない。
NRI調査では、31名のプライベートバンカーに各1時間ずつのインタビューを行った。
あえて、そのなかでの主観的な印象でいえば、「打てば響く人材」こそが、富裕層・超富裕層から求められるといえる。
この「打てば響く人材」というのは、顧客からのあいまいな問いかけに対して、真意を敏感に察知して、的を射たわかりやすい回答を返すことができる、という意味である。
なぜなら、忙しい富裕層・超富裕層は、プライベートバンカーに対して長々と説明したいとは思わないし、プライベートバンカーから的外れな回答が返ってきたときに、再度、説明し直すのは苦痛に感じるからである。
インタビューしたプライベートバンカーの多くが、この「打てば響く」要素を持っていた。
プライベートバンカーたちは、インタビューの趣旨と質問項目を見ただけで、あるいはキーワードを投げかけただけで、こちらの質問の意図を踏まえたコメントを手際よく、わかりやすく話してくれた。
この心地よさが、富裕層・超富裕層の顧客の心をつかんでいるのではないだろうか。
あるプライベートバンカーは、顧客に向かい合うときの心がけを、次のように話している。
『N新聞』のある記事を読んだお客様が何を考えているかを想定し、その想定が正しいかどうかをお客様との電話や面談で仮説検証のように繰り返す。
これを半年ぐらいやるとだいたいお客様の思考がわかってくる(メガバンク・グループのPB)お客様がこうしたいと決めた段階で相談が来ると、あとは手数料のたたき合いになってしまう。
お客様がこうしたいと思う前からずっとそばにいて、海外の事例を持っていったり、いろいろな提案をして、ゲームにたとえるとルールづくりのところから入り込む。
そして、お客様が思い立ったときには必ず自分に電話があるというようにしておく(証券会社のPB)「打てば響く」対応ができるようになるためには、顧客のことを徹底的に考えて仮説検証を繰り返し、その問題意識を、レベルの高い顧客に問いかけることによって生まれる「読み」の鋭さを醸成していくことが必要である。
また、組織として「打てば響く人材」を育てるには、顧客について常に徹底的に考えさせること、要求水準の高い顧客にできるだけ多く接する機会を作ること、本質をわかりやすく説明する力を付けること、の三つがポイントとなる。
「打てば響く人材」は、素質だけで先天的に決まるものではなく、日々の努力と、顧客との真剣勝負がもたらすものである。
富裕層・超富裕層ビジネスの適正な利益率を確保するには預かり資産収益率を1%以下にする富裕層・超富裕層ビジネスにおける適正な利益について考えてみたい。
これまで述べてきた富裕層・超富裕層の金融取引は、1回の注文が数億円に及び、一見、利益率が高いように見えるが、一方で、「お金持ちへの対応は手聞がかかるだけで、儲からない」「PB部門の優秀な人材が少数の顧客に対応しているのはもったいない」「お金持ちは手数料にうるさく、毎回入札する」などの声も聞かれる。
国内で、PB部門単独の収支を公開している金融機関はないが、莫大な利益をあげているという話は聞こえてこない。
あるいは、個人部門から法人部門まで抱える総合金融機関の場合、PB部門がある程度軌道に乗って採算性を確保しても、ビジネスの規模が小さいため、利益の総額は他部門より劣るのが実態である。
なぜ、PB部門は儲からないのか。
その理由は、三つある。
第1番目に、新しい顧客を獲得することが難しいからである。
富裕層・超富裕層は、マス層のようにTVコマーシャルや目玉商品によって、一網打尽に顧客化することはできない。
新しい顧客を獲得するためには、超富裕層の顧客から地道に紹介を受けて広げていくしかない。
第二番目の理由は、担当できる顧客数が少ないことである。
プライベートバンカーが実質的に担当している顧客数は、多くても1〇〇世帯である。
仮に1顧客当りの収益性が高くても、担当できる顧客数が少ないと、ビジネスとしての利益は大きくは増えない。
「PBサービスは、手間がかかるだけで儲からない」といわれる所以である。
第三番目の理由は、徹底した顧客志向を貫かなければならないことである。
この点に関して、かつての証券会社は、短期的に商品の売買を繰り返す「回転売買」を1部の顧客に勧め、多額の手数料を手にしてきた。
現在でも、銀行や証券会社の投信販売は「手数料稼ぎ」と批判されることがある。
しかし、超富裕層は、商品販売や手数料稼ぎの姿勢を敏感に感じ取るため、競争戦略上、「超・顧客志向」にならざるをえない。
これがPBサービスの低収益性につながっている。
次に、富裕層ビジネスのあるべき収益水準について考えてみよう。
PB部門と同様に富裕層ビジネスの厳密な採算性は明らかではないが、PBサービスよりは収益性が高いと見られる。
たとえば、一般に大手証券の個人営業部門はマス層から超富裕層までを対象としているが、その多くの利益は富裕層からの収入に依存している。
仮に富裕層ビジネスだけを切り出すならば、規模が大きく収益性の高いビジネスになるだろう。
ただし、証券会社においても銀行においても、マス層と同じような対応を受けていることについて富裕層の顧客は不満に感じている。
「それなりに資産があるのに、商品を売りつけられる」という不満を、多くの富裕層が漏らしている。
では、富裕層・超富裕層ビジネスにおいて、どの程度の収益率が適正なのだろうか。
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